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【DTM】ミックス初心者のためのボーカルミキシング講座 〜メインボーカル編〜

 

楽曲制作をするうえで、とても重要な行程の一つがミックスです。

楽曲のパラデータとボーカルトラックを如何にして馴染ませていくか。楽器の各パートとボーカルをすっきり聴かせるためには様々な工夫が必要です。

ニコニコ動画系の楽曲によく見られる『歌ってみた』も、まだまだ流行の一つとして盛り上がりを見せています。なので、とりわけボーカルミキシングの需要は高いのではないかなと思っています。

 

そこで、今回はミックス初心者の方にこそぜひ知ってほしい、ボーカルミキシングのコツをお伝えしていきたいと思っています。

 

僕自身、エンジニア活動をスタートしてから、様々なミキシングテクニックに触れてきました。自分自身で試行錯誤を重ねてもなかなか上手くいかず、友人のエンジニアにテクニックを教えてもらったり、WebセミナーやTips動画などで第一線で活躍するエンジニアの技を盗んでみたり。

それらのスキルを身につけていくなかで、自分なりのやり方がある程度確立してきたので、備忘録の意味も込めて、この場に書き記していきたいと思っています。

 

ボーカルミックスで悩んでいる方はぜひ、一度ご覧ください。

初心者の方であればあるほど、何か得られるものがあるのではないかと思います。

 

今回は実際に楽曲を使って解説していきたいと思っています。

使用する楽曲はこちら。

 

・Summer Wish

 

僕が過去に作詞作曲したものです。下手くそな歌唱も昨年の僕です。

著作権の心配は一切ないので、今回はこちらを使っていきます。

上はボーカルに一切の味付けをしておらず、素音源をオケに重ねただけです。ボーカルミックスの過程でどのように変化していくのかがわかりやすいのではないかと思います。

 

それでは、さっそくボーカルに手を加えていきましょう!

 

目次

手順1:ノイズ処理をする

 

まずはここから。ノイズ処理です。

基本的に、DAW上でプラグインを使ってノイズ処理をすることはしません。マシンパワーを大きく消費するからです。

 

DAWにボーカルトラックを突っ込む前に、ノイズ処理ソフトを使用して邪魔な音を取り除いていきます。

ノイズ処理ソフトはもちろん、iZotope社のRXシリーズ。定番ですね。

僕が使用しているのはRX7 Standardです。

 

RXの使い方は過去に解説していますので、そちらをご覧ください。

 

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RXを使えば、大体のノイズは取り除くことができます。

人によってはリップノイズが大きく、RXでは取り除ききれないこともあります。ただ、ある程度取ることができれば、ミックスの過程で様々なエフェクトを加えていくうちに目立たなくなっていきます。妥協できるなら、しつこいノイズは放っておくのも手です。

 

ちなみに、プロの現場ではリップノイズがあまりにもしつこい場合、RXで様々な設定で複数回処理を実行したり、DAW上で鉛筆ツールで直接ノイズ部分の波形を書き換えたりしてノイズを綺麗に取り除いています。

波形の書き換えによるノイズ除去の手順については、またいずれ解説記事を書こうと思っています。ここでは割愛させてください。

 

手順2:ピッチ・タイミング補正をする

 

ノイズ除去したボーカルトラックをDAW上に読み込ませたら、ピッチとタイミングを補正していきます。

人によってはEQ処理を先に済ませる方もいらっしゃいますが、これはもう好みです。耳に痛い成分がピッチの検出に悪影響を与えることを懸念してのことだと思いますが、僕はいつも先にピッチ補正をしてしまいます。

 

基本的にMelodyneを使用していますが、ボーカル補正ソフトならなんでもOKです。ただ、個人的にはMelodyneをお勧めします。

単純にピッチ・タイミング補正がしやすいということもありますが、Melodyne 5にメジャーアップデートしてから、歯擦音やブレスの検出と減衰(ディエッシング機能)、ボーカリストの歌唱の癖(モジュレーション)の増減、各種音量調整(オートメーション機能)など、音楽的な機能がかなり充実してきました。

なので、この段階で歯擦音やブレス、ボーカルの癖や音量など目立ったものは簡単に修正していきます。

 

ちなみに、僕はMelodyne 5 assistantを使用しています。上記の機能がすべて使えるからです。いつかStudioにアップグレードしようと思ってますが、ぶっちゃけボーカル補正としてのみ使用するならassistantで十分です。

それより上のランクになると、楽器の音の補正に効果的な機能が追加されます。

 

手順3:ゲートで無音部分のノイズを完全除去

 

続いて、ゲートを活用してノイズ除去をさらに畳みかけます。

ただ、この工程は必要であれば行ってください。最初にRXでノイズ除去はしてますから。

 

じゃあ、「この段階でも残っているような無音部分のノイズって何ですか」っていう話ですが、それはレコーディング時に拾ってしまったヘッドフォンからの音漏れです。

安価なヘッドフォンを使用していたり、レコーディング時のマイキングが近すぎたりすると、ヘッドフォンで聴いているオケの音をマイクが拾ってしまうことがあります。こればっかりはRXではどうすることもできません。

 

そんな時に活躍するのがゲートです。エキスパンダーでも代用できます。

ゲートは、ある一定音量以下の音を完全に聴こえなくするプラグインです。一方のエキスパンダーは、ある一定音量以下の音を圧縮する効果があり、よくコンプレッサーの逆の効果があると表現されたりします。

 

注意していただきたいのは、あくまで指定した音量以下の音にのみに作用するという点です。無音部分のノイズが聴こえなくなるギリギリのラインを設定した場合、歌唱と重なっているオケの音漏れは、歌唱が一定音量を超えてしまうので消すことができません。

 

このゲートやエキスパンダーですが、基本的にご使用のDAWにデフォルトで備わっているはずです。デフォルトでも十分高性能ですから、それを使えば大いにオッケー。

万が一付属がなければ、ここは素直に諦めて、無音部分を手作業でカットしていきましょう。マシンパワーを節約したい場合などもこの手法は有効です。僕はめんどくさいのでいつもゲートを挿しちゃいます。

 

手順4:EQで下処理をする

 

これも欠かせない手順です。

僕はこの段階のEQ処理をベースEQと呼んでいます。

 

声質やマイクの性能、録音環境などの要因で、レコーディング時にキンキンした耳に痛い帯域が発生することがあります。それらは後のミックスの工程でひどく邪魔になってくるので、この段階でそれらはカットしていきましょう。

また、不要な低域のカットや、あまりに音が目立ちすぎる部分の減衰なども行います。必要に応じてダイナミックEQも活用しながら、自然な仕上がりを目指しましょう。

 

ベースEQでは、FabFilterPro-Q3を使っていきます。これ本当に便利なので、多少値は張りますがぜひ購入をご検討ください。僕はこれを使わないことがないです。

何が便利って、アナライザー付きで視覚的にも見やすく、通常EQとダイナミックEQの併用が可能で、かつLR(左右)、MS(ミドルサイド)、ステレオなど定位ごとの帯域操作もできるし、リニアフェイズEQとしても使えちゃう。欲しい機能がほぼオールインワンされているわけです。

 

人によっては、Pro-Qシリーズは挿すだけで音像が若干変わるのでボーカルには使わないという方もいます。

ただ、僕はバンバン使います。どうせ後で倍音付加などで音像は変えてしまいますから、よっぽど繊細な曲でもない限りそこはあまりこだわりません。空間系エフェクトなども加えたら、果たしてどれだけの人がその微妙な音像の変化に気づくでしょうか?

だったら利便性をとっちゃおうぜ、っていうのが僕の考え方です。実際、ボーカルのベースEQとしてPro-Q3を使っていてクレームを受けたことは一度もありませんし。

 

さて、EQの使い方ですが、これについては過去に解説した記事がありますのでそちらをご覧ください。

 

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上の記事で解説したように、Qを小さく絞ってブーストし、スライドさせて耳に痛い部分を特定したら大きくカットしていきます。

また、マイクによってはハイが低下していて低域が強すぎることもありますので、ここでシェルビングカットすることもあります。

 

ここからは実際にどう音像が変わっていくのかを比較していきます。

今回僕がボーカルのAメロ部分に対して施したベースEQはこんな感じです。

 

 

耳に痛いところを削り、低域をダイナミックEQでシェルビングして下げています。

 

・EQ前

 

・EQ後

 

ひとまず、こんな感じでざっくり音像を聴きやすい状態に整えます。

エフェクトを加えていく過程でベースEQの作り込みが甘いと感じたら、その都度見直していきます。後でここに立ち返ってくる前提なので、この段階ではあまり極端に帯域操作は行いません。

 

手順5:ディエッサーで歯擦音を減衰

 

Melodyneでも歯擦音は調整していますが、あちらはオートメーション的に歯擦音の音量を下げることで対処しています。

もちろん、そのほうが自然な処理ができるのですが、これはボーカリストの歌唱力が高く、発音が綺麗な方にこそ有効な手法です。

歌唱時に息の量が多く、どうしても歯擦音が大きい場合には、加えてディエッサーで微調整していきます。

 

ディエッサーもお好みのものを使ってください。

僕の場合は、WavesSibilanceを使用しています。歯擦音だけでなく、『ち』や『つ』などの破擦音にも対処してくれるからです。

 

今回はこんな感じの設定にしました。

 

 

・ディエッサー前

 

・ディエッサー後

 

手順6:ボーカルオートメーションを書く

 

オートメーション、本当にめんどくさいですけど、これも間違いなく必要な工程です。ボーカルの抑揚を演出する上では必ず書きましょう。

 

コンプレッサーでダイナミクスの調整はできますが、あれは音が大きいところから小さいところに向かって上から思いっきりぶっ潰してるので、場合によっては声が歪んでしまいます。

じゃあ逐一オートメーションを書くのかよ、って思われた方。実は、大御所エンジニアの皆さんは軒並みきちんと書かれてます。それでクオリティが上がるのだから、やらない手はありません。

 

ただ、如何せん全部書くのはめんどくさいわけです。なのでここは便利なプラグインを使いましょう。

Wavesが誇るボーカルフェーダープラグイン、Vocal Riderです。

 

 

Vocal Riderはボーカルの音量感に合わせて自動でフェーダーを調整してくれるプラグインです。本当に便利な時代になりましたね。

唯一の難点は、やはり人間ではなく機械がやることなので、「えー、そこちょっといじりすぎじゃない?」と感じるような不自然な音量操作がなされてしまうことです。

 

ですが、ご安心を。

Vocal Riderはフェーダーの動きをDAW上のオートメーションに自動で書き起こす機能も備わっています。書き出したオートメーションを自分の手で調整すればバッチリですね。

 

なお、ここで書き出されるのはオーディオボリュームのオートメーションではありません。Vocal RiderのRider Faderをオートメーション化しています。要するに、Vocal Rider上のフェーダーの動きを記録し、そこに後から手を加えるということです。

この手法であれば、プリフェーダーポストフェーダーも自在に指定できます。Vocal Riderのインサートの順番を変えるだけで良いんですから。便利なことこの上ないですね。

 

詳しい手順についてはすでにネット上で解説されていますので、ここでは割愛します。

僕が参考にしたブログのリンクだけ貼っておきますね!

 

ChanomaのSound Laboratry『WavesのVocal RiderをLogic Pro Xで使ってみた。』

 

この工程は、歌唱のダイナミクスの差があまりにも大きすぎた場合にのみ行います。ボーカリストによっては、ダイナミクスに大きな差がなくとも抑揚をしっかり作れるハイレベルな方もいらっしゃるので、その場合はVocal Riderは必須ではありません。

 

手順7:コンプレッサーでダイナミクス調整

 

さて、オートメーションで音量もある程度調整をしたら、やっとここでコンプレッサーが登場します。

コンプレッサーの使用目的はとにかく、アタック感の演出ダイナミクスの均一化です。初心者の方ほど間違えやすいですが、コンプレッサーは音量を揃える目的のものではありません。ここで揃えるべきなのはダイナミクスです。(これ本当に重要)

音量を揃えたい場合は前項のオートメーションが重要です。認識をきちんと棲み分けておきましょう。音量を揃える目的でコンプを使用すると、とにかく音がのっぺりします。抑揚の大部分を失ってしまいますので、それは避けたいところです。

 

使用するコンプレッサーは、お好みのものを使ってください。アナログモデリングのものを使っても良いし、デジタル感満載なものを使っても良いと思います。

楽曲のジャンルに応じて使い分けるのも良いですね。

例えば、ヒップホップなどのラップを聴かせたい楽曲ならば、アタック感をいかに強調できるかが鍵になるので、LA-2A系のようなアタックが遅いコンプは不向きです。1176系のような、バシッと歯切れの良いアタック感を残してくれるものが向いているでしょう。

 

この辺り、ミックス初心者の方にとってはかなり難解な部分かもしれません。僕もコンプレッサーは理解するのに相当な時間を要しました。アナログ機材ごとにどんな変化があるか、知識としては持っていても、音で聴いてみたら全然わからない、という方も多いのではないかなと思います。

 

なので、まずは分かりやすいコンプを使うことをおすすめします。ヴィジュアルアナライザー付きでコンプのかかり方が目でわかるものも良いし、プリセットが豊富なものも良いです。

そのどちらも兼ね備えているのがFabFilterPro-C2。とてもよくお世話になっているコンプです。

 

 

アタックは0.5ms、リリースは160ms、レシオは4:1、スレッショルドはお好みで。

これがハイテンポでラップ調の楽曲ならリリースはもっと縮めるし、スロウなバラードならアタックもリリースももう少し遅めにしたりします。ただこれはあくまで僕の感覚なので、この辺はもう本当に好みの問題です。

 

・オートメーション&コンプ前

 

・オートメーション&コンプ後

 

手順8:ダブラーでボーカルにエッジ感を与える

 

これも本当に大切。昨今の楽曲ではダブラーを上手にかけていることがほとんどです。

わかりやすくダブらせて特徴的なサウンドにしたり、うすーくかけることでそれとなく声の輪郭を整えたり。今回は後者の目的で使用していきます。

 

使用するプラグインはWavesDoubler 4です。いろんなダブラープラグインが出てますが、僕はメインボーカルに挿すダブラーはWaves一択です。細かく作り込めるので重宝しています。

設定は以下のような感じです。

 

 

思いっきりダブらせるのではなく、やんわりとダブらせることで輪郭を際立たせます。

重ねる声はローカットをしておき、高域部分は少しだけシェルビングブースト。声の中域から高域にかけてを少し強化します。

 

・ダブラー前

 

・ダブラー後

 

この手法は友人のエンジニアから教えてもらったのですが、実際に試してみると自分が求めていたボーカルデザインに近づいたので、いろんなプリセットをいじりながら、いい感じの設定を追求していきました。結果、このような設定に落ち着いたわけです。

いつかはボーカルデザインの好みが変わって別の設定をプリセット登録するかもしれませんが、現時点では毎回この設定をベースに、微調整しながら使用しています。

 

手順9:イメージャーで歌声の広がり方を操作する(取扱要注意)

 

ボーカルミックスの仕上がりを左右するポイントの一つがイメージャー処理

ただ、これは皆さんが求めるスタイルに合わせて使い分けてください。

 

まず、具体的な使い方の前に、海外のボーカルミックスについて少し触れていきます。

 

アメリカのポピュラー音楽は、ボーカルはイメージャーで広げるのではなく、完全にモノラルでミックスしていることが多いです。

むしろ、様々なエフェクト処理を経てややサイドに散っていった音像を、イメージャーを帯域別に丁寧にマイナスに振ることで声をシャープにしている印象すらあります。

これは、声を聴かせるというより、音楽全体を聴かせる文化があるからです。歌声や歌詞は音楽の一部。なので、完全モノラルでミドルに収め、サイドでは楽器の絡みを上手に聴かせています。

 

一方の日本のボーカルは、イメージャーで広げて、声にわかりやすく存在感を与えていることが多いです。これは、ボーカルを楽曲の主役とするためのミックスです。

もとより、日本は7世紀頃から、古事記や万葉集などでお馴染みの和歌を楽しんできました。日本人にとって詩や歌は大切な文化なんです。

現代の音楽においても、そういった和歌を嗜んできたDNAが働いてボーカルを目立たせたくなってしまうのではないかなと個人的には思っています。

 

どちらのミックスが優れているとか、どちらの方が上手いか下手かということではないんです。

国によってそれぞれタイプの異なるミキシングがあるのだということを、ぜひ覚えておいてください。

 

さて、ここは日本ですから、ボーカルはイメージャーで広げた方が良いのでしょうか?

いいえ、絶対にそうしないといけないなんてことはもちろんありません。好みのミキシングをすればそれでOKです。

最終的に楽曲全体をイメージャーで少し広げたりするので、意外とボーカルはシャープにしておく方が仕上がりが良いことが多いと個人的には思っています。

 

というわけで、今回も声をシャープにするスタイルでいきます。

使用するイメージャーはiZotopeOzone 9 Advancedに含まれている、Ozone 9 Imagerです。

低域はマイナスMAX値に、中域以上は半分ほどマイナスにして、やや高域が気持ちよく聴こえるように調整していきます。

 

なお、イメージャーで声を広げる場合も、中域以上のみを広げるようにした方が良いかと思います。低域は声に厚みが出るので強調したいところですが、サイドに広げるとのっぺりした音になりやすいです。(結局はここも好みの問題ですが)

 

 

・イメージャー使用前

 

・イメージャー使用後

 

手順10:倍音を付加してボーカルをさらに際立たせる(取扱要注意)

 

必要に応じて、エキサイターで倍音を付加してさらに声を際立たせていきます。

エキサイターとは、帯域を指定してそこに倍音を付加していくプラグインです。同様のものにサチュレーターがありますが、こちらは帯域指定をせず、トラック全体に倍音を付加していくものになります。

 

サチュレーターを使用するケースは様々あります。例えば、低域の強化とか。

昨今は音に対して規則正しく倍音を付加できるようになりました。倍音が綺麗に上に重ねられていくと、人間の耳はその基音がさらに低いところににあるように感じます。これを利用し、もっと低い位置で鳴ってほしいキックベースなどにサチュレーターを適用するわけです。

ただ、この段階のボーカルにサチュレーターをかけるのはあまり得策ではありません。低域が欲しいなと感じたならば、最初のベースEQの段階でカットした低域を見つめ直してください。それで低音感はかなり解決するはずです。

 

さて、エキサイターの用途ですが、声に艶を出したいときに使う、なんて表現をすることがあります。早い話が、中域以上の声の鳴り方をデザインする目的で使うわけです。

ただ、これ本当にやりすぎ厳禁です。あまりに過剰な設定にすると声がキンキンした耳障りな音になってしまいます。

 

使用するエキサイターですが、ここでもiZotopeのOzone 9 Advancedにお世話になります。Ozone 9 Exciter大好きです。

設定はこんな感じにしました。

 

 

1kHzあたりから2kHzあたりに重心を集めたかったのと、高域にシルキーさを出したかったので、1kHz以降に倍音を付加することとしました。

ただ、前述の通り僕の声はもともとシャリシャリしがちなので、倍音は少しだけ加えるような設定にしています。

 

・エキサイター前

 

・エキサイター後

 

なお、使用するエキサイターによっては、イメージャーほどではないですが、声が若干広がりを持つこともあります。

それも味となって良かったりするのですが、あまり広がって欲しくない場合は前項のイメージャーとインサートの順番を入れ替えてみてください。声が真ん中でまとまってくれるはずです。

 

・エキサイターとイメージャーの順番入れ替え後

 

手順11:オケにボーカルが入る隙間を作る

 

さて、そろそろオケとボーカルの馴染み方を調整していきましょう。

声とオケを重ねたときに声が聴こえやすくなるよう、オケにボーカルが入る隙間を作る必要があります。

 

まずは、ここまでエフェクトを加えてきた声をそのままオケと重ねてみましょう。

 

・オケと声のベタ付け

 

作曲段階で歌が入ることを想定したEQ処理をしていたので、思ったよりも上手く混ざっちゃってますが、これをさらにオケと馴染ませていきます。

 

まずボーカルトラックに、なんでも良いのでアナライザーをインサートしてください。ご使用のDAWにデフォルトで備わっているはずですし、Pro-Q3のようなアナライザー付きのEQとかでも良いです。

 

 

今回はLogic Pro付属のアナライザーを使用しました。

見てみると、500Hz付近の低域がかなり強いことが見てとれます。しかし、ここはオケのベースの音と帯域が被る部分です。声とベースのどちらを響かせたいかを考えたとき、今回はダンスミュージックなので、オケのベースを際立たせるべきでしょう。

ひとまずここは、ベースとの絡み方を聴きながら判断していきたいので一旦保留です。

 

続いて声が際立っているのは、先ほどエキサイターで厚みを持たせた1kHzから2kHz付近です。この辺りで声の存在感を持たせたいのであれば、オケからその帯域を減衰させて隙間を作っておく必要があります。

このAメロ部分であれば、ストリングスシンセの音がぶつかっているわけなので、ストリングスシンセにEQをインサートします。

 

 

設定はひとまずこんな感じ。

単純に、声の際立たせたい部分と近しい帯域を、オケの方から引き算してしまえば、その分だけ声が目立ってくるよね、という考え方です。

ポイントは、ここまで一生懸命声をミドルにとどめてきたわけですから、オケはミドル部分にのみ手を加えていくことです。ステレオ全体の帯域を操作してしまうと、逆に声が浮き出てしまいます。

 

また、インストゥルメント音源によってはそのサウンドを構成する大部分をミドルに集中させているものもありますので、EQを挿す前にイメージャーで広げるか、EQを挿した後でWevesのCenterなどでサイドの音を持ち上げて、声の両サイドでオケを気持ちよく鳴らしてあげるのが良いでしょう。

 

 

この時点で簡単に、ボーカルのピッチ・タイミングのズレや、ここに至るまでボーカルに付加してきたエフェクトも微調整していきます。

 

・オケとのバランス調整後

 

なお、今回はオケがパラデータなので楽器単位で音像調整ができますが、ニコニコ動画特有の『歌ってみた』などのオケは完成品の2mix、あるいはラウドネスがパッツパツのマスタートラック(ニコニコ系は特に顕著。『音圧』という言葉が生んだ悲劇)だと思います。その場合は楽器別に帯域操作をすることはできません。

そこににボーカルを埋め込むのは結構難しいわけですが、同じようにボーカルが入る隙間を作ることを意識してオケをいじっていきましょう。

 

手順12:空間系エフェクトで味付け

 

さて、それではここから空間系エフェクトで声にお化粧を施していきます。

空間系エフェクトはインサートではなくセンドリターンする、という知識を持っておられる方は、初心者の方でも多いかと思います。基本的にはその認識で間違いはありません。ただ、楽曲によってはインサートで対応することもあるので、センドリターンがすべてではないということは覚えておきましょう。

 

とは言いつつも、センドリターンで対応することの方が断然多いです。ここでも同じようにセンドリターンで空間系をデザインします。

 

ひとまずはプレートリバーブを入れてみましょうか。使用するリバーブは、WavesがリリースしているManny Marroquinシグネイチャーモデルのリバーブです。

 

 

単純に使いやすくて好きなので、基本的にこれを使っています。本当はiZotopePhoenix Verbが欲しいのですが、買うタイミングを失ったまんまです。笑

 

さて、オグジュアリートラックにリバーブを挿したら、その後段にEQを挿します。

EQではローカットハイカットを施しましょう。リバーブ上でその辺りを設定しても良いのですが、EQの方が自由が効くので僕はいつもEQで残響をデザインします。

必要に応じてエキサイターなども使い、残響音が良い感じになるポイントを模索します。こればかりは人によって好みが分かれますので、皆さんが気持ち良いと感じる残響を探してみてください。

 

残響のデザインができたら、僕の場合は続けてイメージャーをその後段に挿します。声に挿したプレートリバーブがサイドに広がりすぎると、オケとのバランスが悪くなることが多いからです。

プレートリバーブは比較的ミドルにとどめておくような使い方が僕は好きなので、広がりすぎないようにイメージャーで調整していきます。

 

・プレートリバーブ入り

 

(ピッチを微調整したら不可解なノイズが入ってしまったので、その部分だけ切り取ってます。若干不自然ですが、今回は解説用のミキシングですのでご了承ください。もちろん、実際にミキシングをご依頼いただいた場合はノイズ除去で取り除きます)

 

手順13:必要に応じて空間系エフェクトは複数種類用意する

 

たった今プレートリバーブを施しましたが、リバーブは複数種類を重ね合わせると面白い残響感を生むことができます

 

今回はプレートリバーブだけでうまく纏まってくれているのでリバーブは足しませんが、必要に応じて複数種類用意しておくと良いと思います。

 

手順14:EQで音像の微調整

 

さて、そろそろ仕上げに差し掛かっていきます。

EQでボーカルの音像を微調整しましょう。ここではベースEQで使ったPro-Q3ではなく、アナログモデリングEQを使用します。この段階のEQを僕はメイクアップEQと呼んでいます。

アナログモデリングEQは通した時に特殊な倍音効果が付加されますので、声に艶がないと感じた時には有効です。ボーカルがすでに倍音過多でシャリッシャリになりかけている場合は、Pro-Q3のようなフラットなEQで良いと思います。

 

この段階で僕が使うのは、WavesScheps73です。Neveの音が好きなので、Neveのモデリングを使っていきます。

 

 

なお、Neveのモデリングプラグインとしては、同じWavesでV-EQがあります。Neve以外にも、SSLManleyなどのモデリングも探せばありますので、お好きなものを使ってください。

ここでは、まだ膨らみすぎている低域の減衰と、中域、高域の微調整をしていきます。特に高域の音の抜け感がもう少し欲しかったので、少しだけブーストしています。+0.3〜+1dBくらいです。

 

・メイクアップEQ前

 

・メイクアップEQ後

 

手順15:コンプレッサーで音をまとめる

 

さあ、いよいよ仕上げです。

最後にコンプレッサーで音をまとめます。アタック感をどれだけ残すかも考えながら、バランスの良いポイントを探していきましょう。もちろんかけすぎ厳禁です。

 

使用するのは先ほどもお世話になったPro-C2。デフォルトではClassicモードですが、Vocalモードに変えて使います。

レシオはボーカルに適した形で自動設定されるので、その他の項目だけ設定しましょう。

 

また、Logic Proユーザーの方はここまでステレオ録音されたボーカルで対応してきた方もいるかと思います。Logicの仕様上、操作に慣れていない方であればあるほど起こりうることです。コンプをかけた後で、最後の最後にもう一度イメージャーでミドルサイドを調整しても良いと思います。必要に応じて対応してください。

 

・コンプとイメージャーで最終調整したもの

 

【終わりに】これは2021年3月時点の僕のボーカルミキシングの考え方

 

僕自身もまだまだ発展途上です。

これはあくまで現時点での僕のボーカルミックスであって、今後は上達して別の手順を踏んでいるかもしれません。

ですが、ここまで工程を細かく語る記事はもう書きません。見せたくないとかじゃなくて、単純に書くのめちゃめちゃ疲れるので。笑

 

今後もDTMerの皆さんのお役に立てるような記事を執筆し続けていきますので、これからもぜひご贔屓にお願いいたします!

 

それでは今回はこの辺で!

また次回の記事でお会いしましょう!!

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