DTMをするうえで、まず必要となるのはパソコン。
今はスマートフォンやタブレットでもDTMができるようになりましたが、やはり本格的な作曲をするならパソコンがあったほうが断然良いです。
パソコンを選ぶにあたって、まず最初に悩むのがこれではないでしょうか。
MacとWindows、どっちが良いんだろう…
そう、『MacとWindowsどっちの方が良いのか問題』です。
Macがおすすめだという人もいれば、いまはWindowsのほうが良いという人もいます「じゃあ結局どっちが良いのよ」と文句も言いたくなりますよね。
今回は、DTMにおけるパソコンの選び方について解説をしていきます。
重要にな考え方は、『使いたいDAWに併せてパソコンを選ぶ』ということです。
・これからDTMに挑戦したい
・DTM用のパソコンを新調したい
・MacとWindowsのそれぞれの特徴が知りたい
・現役DTMer
・ラジオ番組に楽曲提供経験あり
・アーティストの楽曲ミキシング経験あり
・Mac、Windowsどちらも使用経験あり
DTMにおけるMacとWindowsの違い
Macはクリエイター向きで、Windowsはビジネス向き
機能性、操作性ともに異なる特徴を持つMacとWindowsですが、最大の違いは設計コンセプトです。
まずはMacから説明していきましょう。
Macはリリース当初から、長年クリエイターたちに愛されてきました。そのため、クリエイターが作業しやすいようにOSも設計されています。
その特徴は、ユーザーが指示したことだけに処理能力を集中してくれること。マシンパワーを余計なことには使わない特徴があるのです。
音楽なら音楽にのみ、動画編集なら動画編集にのみ力を使ってくれるので、自分のやりたいことをストレスフリーにこなしてくれます。クリエイターがMacを愛して止まない最大の理由がこれです。
一方のWindowsは、ビジネスシーンでベストなパフォーマンスを発揮することを念頭に置いて作られたOSです。
ビジネスにおいて何よりも求められるのは、マルチタスクに物事を処理すること。
つまり、マシンパワーをある程度分散させて、複数の処理を同時に行うことに特化したOSなのです。
ビジネスマンにとってこれほど素晴らしい機能を持ったOSはないわけですが、クリエイターにとってもベストかというと、少し首を傾げざるを得ません。
特にDTMは、楽曲を完成させるにあたり約3〜4分間に複数の音を重ねて鳴らす必要があります。当然、それだけ処理にパワーが必要になってきますよね。
Windowsの場合は、音楽に集中したくても音楽以外のことに力を使われてしまい、DAWソフトの処理が遅くなってしまうことも考えられるということです。
こうして比べてみると、DTMに特化したマシンの使い方をするのであればMac一択であるように思えますが、果たして本当にそうでしょうか?
MacとWindowsはパソコン本体の金額に大差あり
少しOSから枠をはみ出して考えてみます。
MacOSを搭載したMacシリーズは、Apple社からのみ販売がされています。言ってしまえば独占企業です。
Appleが成長を続けてきたことでMacシリーズにはブランド力がありますので、販売価格はブランドバリューを加味した値段になっています。コアなファンが多いこともあり、高額で販売しても十分に売れてしまうのです。
Macシリーズを買う場合は、とにかく予算を圧迫してきます。これは音源やプラグインを買い足すことが多いDTMerにとっては痛い話でしょう。
対してWindowsOSは、供給元のMicrosoft社がOSのみの販売もしています。そのため、同OSを搭載したPCはMicrosoft社だけでなく、他メーカーからも数多く販売されています。
WindowsOSを搭載したPCが各社から販売されるということは、OSではなくパソコン本体の価格において競争が発生するということです。
なので、Macマシンとほぼ同等のスペックのWindowsマシンが、Macの半額以下で買えちゃうケースが多々あります。DTMerにとって手が出しやすいのは断然Windowsなのです。
フリープラグインの豊富さが違う
DTMを始めると、誰しもが次第にプラグインを充実させたくなってきます。
しかし困ったことに、プラグインは集めようとすると多額のお金がかかってしまうんです。
そんなときに行き着くのが、フリープラグインの導入。いまは無料でもそこそこ使えるプラグインが多数く存在していますから、お金が工面できるまではフリーのものでなんとかしようと考えるわけです。
しかしこのフリープラグイン、MacとWindowsでは豊富さに雲泥の差があります。
Macで使用できるフリープラグインはかなり少なく、Windowsで使えるフリープラグインは以上なほど豊富です。なるべく低コストで本格的な楽曲制作ができるDTM環境を作ろうと思ったら、Windowsのほうが有利であることになります。
ただ、じゃあMacに導入できるフリープラグインだけでは心許ないのかというと、そういうわけでもありません。有名なプラグインメーカーがフリーで提供しているプラグインは基本的にMacにも導入可能ですし、その手のメーカーはだいたい、定期的に有料プラグインを無償配布していたりするので、必要な武器は十分に揃います。
何より、現在のDAWは初期搭載されているプラグインがかなり優秀で、フリープラグインをたくさん導入しなくとも済むことが多いんです。
下手に色々インストールしてストレージを圧迫してしまうくらいなら、最初から有名メーカーの公式フリープラグインや有料プラグイン等だけで武器を増やしたほうが、ウイルス感染のリスクも防げるのでおすすめです。
とはいえ、フリープラグインの豊富さに差がある事実は否定できませんので、『お金をかけなくても多数のプラグインが選び放題である』という点においては、Windowsに軍配があがります。
DTMにおいてチェックすべきパソコンスペック
続いて、パソコンを選ぶときに重要な判断基準となるスペックについて話をしていきます。
DTMにおいては、CPU、GPU、メモリ、ストレージの4つに着目すると良いでしょう。それぞれ説明していきます。
CPU
CPUとは、PCの頭脳となる部分のことです。
『intel デュアルコア i7 』とかよく見かけると思いますが、それこそがCPUのスペックを表しています。
CPUにおいて大切なのは、コア数とバージョンです。
コア数は一般的に、『デュアルコア』『クアッドコア』『6コア』などと表記します。コア1つにつき、1つの頭脳を持ち合わせていると考えてください。デュアルコアなら頭脳2つ分、クアッドコアなら頭脳4つ分といった具合です。
続いてバージョンは、頭脳の新しさを表しています。新しければ新しいほど、マイナーチェンジが加えられて優秀になっていると思っていただいて大丈夫です。
Intel製のCPUはi5、i7などのバージョンがありますが、数字が大きいほど新しいバージョンになっています。
たまにMacbook 12インチのようなマシンスペックを求めていないような機体だと、『coreM』などの低ランクCPUが搭載されている場合があります。購入前には必ずintelの公式サイト等で、CPUのバージョンと性能を確認しておいてください。そこそこの頭脳が2つあるのと、優秀な頭脳が2つあるのとでは処理能力は大きく変わってきます。
昨今のMacは、Appleが独自に開発した頭脳チップであるM1を搭載していることもあります。
M1チップは驚くほど性能が良い上にコスパも良いのでとてもおすすめですが、残念ながらM1搭載型のパソコンはMacOSが新しすぎて、DAWやプラグインの互換性が追いついていない状況です。ゆくゆくは互換性も改善されるはずなので、先行投資としてM1搭載型Macを購入してみるのは大いにアリですが、現段階では何かと不便な点も多いことは覚えておいてください。
M1チップのスペックは8コアCPU + 8コアGPUです。後ほど解説するGPUにおいても十分すぎるスペックなので、今後のMacシリーズはApple製チップがメインになっていくことが予想されています。
Intel製のCPUを使用する場合は、DTMにおいては最低でもデュアルコアi5は欲しいところです。
ただ、これはグレードが高ければ高いほど良いので、予算に余裕のある限りハイランクなものを選びましょう。
GPU
一般的にグラフィックボードと呼ばれるもの。主に映像関係の処理に使う頭脳チップで、ゲーミングパソコンなどでは重要視されているスペックです。
「別にゲームしないけど」と思われた皆さん、実は楽曲制作には様々なグラフィックを使うんですよ。
プラグインを立ち上げるたびに画面上に設定画面が出てくるし、昨今は音像を視覚的に捉えるプラグインも増えてきていて、楽曲の再生時にリアルタイムでグラフィックが動くこともよくあります。そういった画像や映像の処理に使用されるのはGPUです。
GPUを制作しているメーカーはいくつかあり、どちらの方が性能が良いのかを判断するのは少々難しいです。わかりやすくまとまったサイトがありましたので、ここでご紹介しておきます。
グラフィックボード性能比較 2021/6/9更新【ドスパラ】
メモリ
メモリは、言ってしまえばPCにおけるCPU・GPUの作業部屋のようなものです。
基本的には容量が大きければ大きいほど良いということになります。先のCPUよりもこのメモリの方が大切かもしれません。
従業員2名が作業をする場面を想像するとわかりやすいでしょうか。
作業スペースが狭すぎた場合、どんなに優秀な従業員たちが業務を行ったとしても、窮屈すぎてあまり良いパフォーマンスは生まれません。
逆に、作業スペースが十分に確保できるのであれば、従業員たちがそこそこの処理能力しか持っていなくとも効率よく立ち回ることができるはずです。
PCでも同じことで、メモリ容量を十分に確保できるのであれば、CPUが多少弱くとも快適にDTMをすることができます。こちらも予算の許す限り底上げしたいところです。
DTMにおいては、メモリは16GBあればひとまずOKです。
最低でも8GBは確保してください。それ以下になると楽曲制作中に不具合をきたすことが多い印象です。
ストレージの考え方
ストレージとは、PCに様々なデータを保存するための容量のことです。
メモリと同じくGB(ギガバイト)で表しますが、メモリとは全くの別物なので注意してください。なかにはTB(テラバイト)単位の大容量ストレージを備えているパソコンもあります。
ストレージはPC選択において、そこまで重要視しなくても良い唯一の項目になります。
なぜなら、外付けのハードディスクやメモリースティックが格安で販売されているからです。
ストレージには、HDD(ハードディスクドライブ)とSSD(ソリッドステートドライブ)の2種類のタイプがあります。
細かいことは省いてざっくり説明するならば、SSDの方がデータを呼び出すのに電力をあまり使わないうえ、呼び出し速度が段違いに早いです。ストレスなく作業をするならSSDは必須だと言えます。
ストレージは大容量であればあるほど良いことに違いないですが、SSDで256GBもあればひとまずOKです。128GBだとやや心許ないですが、それでもやれないことはありません。
いまは外付けHDDが2TBで8,000円という破格で販売されているような時代です。
足りないと感じたら増やす、という考え方で問題ありません。後でどうとでもなります。
DTM用パソコンの正しい選び方
まずは使いたいDAWソフトを決める
「じゃあ結局のところ、パソコンはどうやって選んだら良いわけよ」と思われた皆さん。まずは『DTMをするためにはパソコンから選ぶべきなのである』という考え方を捨てましょう。
ここに至るまでに説明した通り、MacもWindowsもそれぞれ良さがあります。そもそもOSのタイプも全然違うので、この選択からスタートするのは余計に頭が混乱するでしょう。
なので、パソコンから選ぶのはやめにして、先にDAWソフトから選ぶようにしましょう。
DAWソフトから選ぶ理由は至って簡単で、DAWごとに使用できるOSが決まっているからです。
Macでのみ動作するDAWもあれば、Windowsでのみ動作するDAWもある。MacとWindowsのどちらにも対応しているDAWもあります。
先にDAWソフトを決めて、もしそれがWindowsでのみ動作するDAWなのであれば、その時点でMacを買う選択肢は無くなります。これまであれこれと悩んできたことが、一瞬で解決できてしまうわけです。
また、DAWソフトにもそれぞれ特徴があります。そのDAWにしかない特殊な機能もあったりするので、DAWごとに得意とするジャンルが分かれているのです。
先にパソコンを選んだがために、本来あなたがやりたかった音楽を苦手とするDAWしか選べない状況になってしまったら大変です。なのでまずは、あなたの相棒となるDAWソフトを先に選ぶことをお勧めします。
各DAWソフトの特徴はこちらの記事にまとめております。選考時の参考資料としてぜひご活用ください。
DAWソフトに対応しているOSを選ぶ
さぁ、これから愛用していくDAWソフトを決めたら、今度こそパソコンを決めていきましょう!
Windowsにのみ対応しているDAWソフトならばWindows、Macにのみ対応しているDAWならMacを選ぶことになりますが、Win / Mac両対応の場合は判断に悩むかと思います。
その場合は、以下の判断基準を採用すると良いと思います。
・金銭的に余裕がある or 将来的に本格的に音楽活動をしていきたいならMac
・お金がない or 趣味として取り組んでいきたいならWindows
プロを目指すほどの本気度に溢れているなら、無理をしてでも高いものを買っておいたほうが、今後の活動への身の入り方も変わってきます。僕もそうでした。
クリエイティブな作業をするなら、やはりMacは強い味方です。
一方で、金銭的に余裕がない場合や、DTMは趣味として取り組んでいきたい場合はWindowsが良いと思います。おそらくDTMよりも他の何かのほうがプライオリティが高いはずですから、何もDTMに高額なお金を投資する必要はありません。
Windowsでも十分にDTM活動をすることは可能です。本気は本気なんだけど今はちょっと予算が…という方にもWindowsはおすすめできます。
スペックを比較してパソコンを選ぶ
クリエイティブな活動に取り組むことになるので、当然スペックは高ければ高いほど良いです。
が、どれを買えばいいか判断に迷う方もいらっしゃると思うので、レベル別に3段階のスペック基準を考えてみました。
・CPU:4コア以上(Intel製ならi7以上を推奨)
・メモリ:16GB以上
・ストレージ:1TB以上
・CPU:2コア以上(Intel製ならi5以上を推奨)
・メモリ:16GB
・ストレージ:512GB以上(外付けHDDの使用を推奨)
・CPU:2コア以上(Intel製ならi5以上を推奨)
・メモリ:8GB
・ストレージ:256GB以上(外付けHDDの使用を推奨)
ご自身の状況に合わせて、お好きなスペック基準を使ってください。購入時の判断材料となれば幸いです。
今回、GPUについては上記基準に明記しておりません。
というのも、Macシリーズは基本的にGPUをオプション選択できないので、考える必要がないのです。
Windowsパソコンを買う場合のみ、追加でGPUも比較検討してください。比較時は先ほど掲載したリンク先を参照すればOKです。
ノート型を選ぶかデスクトップ型を選ぶかはお好みで。外に持ち出す機会が多い方はノートを選べばいいし、あまり持ち出しはしたくないのであればデスクトップを選べば良いと思っています。
Macシリーズを新品で購入しようと考えている方は、OSのバージョンにも注意してください。あまりに新しすぎると、DAWソフトやプラグインがそのOSのバージョンに追いついていない可能性があります。
不安であれば中古の美品を購入するのも手です。Macシリーズの魅力は、過去のマシンでも現役バリバリの活躍を見せてくれるところです。
中古で購入する際は、過去2年以内のモデルを購入しておけば良いと思います。購入時には念のため、店員さんにOSのアップデートを行っていないかどうかを確認した方が安心です。
なお、Windowsパソコンの場合は基本的に新品を買うことをお勧めいたしますが、どうしても金銭的な理由で中古パソコンの購入をしなければならない場合は、同様に過去2年以内くらいのモデルのものを探しましょう。
パソコン購入後の注意! OSのアップデートはすぐには行わないこと!
無事にパソコンを購入できた方、おめでとうございます。最後に一つだけ注意喚起させてください。
OSのアップデートは安易に行わないようにしましょう。
ここに至るまでに何度か触れましたが、DAWソフトやプラグインにはOSバージョンとの互換性の問題があります。
新しいOSが出てアップデートしてみたら、DAWソフトがそのOSに追いついていなくて動作不良を起こすようになった、なんて事例は沢山あるんです。
新しいOSバージョンが出てワクワクする気持ちもわかるのですが、それはそっと胸にしまっておきましょう。実際にアップデートするのは、自分が保有しているDAWやプラグインたちが最新OSと問題なく互換していることが公式に発表されてからです。
PC購入後は、OSのアップデートはすぐに行わないこと。これは必ず覚えておいてくださいね!
【終わりに】納得する買い物をして、充実したDTMライフを!
さて、いかがでしたか?
パソコン購入は言わずもがな高い買い物です。失敗したくないからこそ、どれを買えばいいかすごく悩んでしまうものです。
この記事が、そんな悩める駆け出しDTMerの皆さんの道標となってくれたら幸いです。
無事にDTMを始める環境が整った方。このサイトではDTM関連の情報発信を定期的に行っておりますので、よければ他の記事にも遊びに来てくださいね!
それでは今回はこの辺で!
また次回の記事でお会いしましょう!