今回は楽曲の根幹を形作る重要な要素、ドラムビートを打ち込んでいきます。
音楽にはジャンルがあり、それぞれのジャンルを決定づける要素がいくつか存在しているわけですが、その最たる例がリズムです。
リズムを構成するのに大切なのはドラムとベース。バンドではこれらのパートを担う方々をリズム隊と表現することもあります。
しかし、ベースはある程度のコード進行が決まったあとでラインを作っていくものです。もちろん、ベースラインからコード進行を決めていくことも多いですが、やはりリズム構成のもっとも重要な部分はドラムだと言えます。
ドラムビートにも様々な種類があります。
聴く人が聴けば、ドラムビートを耳にしただけでその音楽ジャンルを特定できる人もいるので、それほど重要なパートだということです。
今回は、Logic Pro X上でドラムビートを形作っていくためにはどのような手順で打ち込んでいけば良いか、そのプロセスを解説していきます。
もちろん、使用する音源はLogic Pro Xに初期搭載されているもののみです。
さっそく見ていきましょう!
まずはジャンルごとのリズムの特徴を理解する
まずはジャンルごとのリズムの特徴を理解していきましょう。
ここで解説するリズムがそのジャンルのすべてというわけではもちろんないです。それを解説しようとするとそれだけで記事が終わってしまうので、ここでは代表的なリズムをざっくりと取り上げていきたいと思います。
4、8、16ビートは全ジャンルで使える万能リズム
4ビート、8ビート、16ビートは基礎中の基礎のビートですが、基礎だけあって、あらゆるジャンルで活用することができる万能なリズムであると言えます。
リズムでジャンルを演出するのに重要なのはビートだけではありません。ここにテンポという要素が合わさることで、ジャンルらしさを表現することができます。
例えば、やや速いテンポで4ビートを刻めばEDMっぽくなったり、それが8ビートや16ビートになればロックやメタルっぽくなったり。
逆に、遅いテンポでこれらのリズムを刻むと一気にR&BやHip Hop感が出てきたりするので、テンポを捉えることは本当に重要です。
逆に言えば、楽曲制作をするにあたり、テンポ設定が適切にできているならば、ビートは基本のものを使っても差し支えないということでもあります。
ブルースやロカビリー、EDMなどで使われるシャッフル
さて、4、8、16ビートから少し発展したのがシャッフルビートです。
こちらは3連符から真ん中の音を抜いたビートです。
・定番ビート
・シャッフルビート
ここではテンポ感を半分にしてシャッフルさせるハーフシャッフルビートにしていますが、3連符から真ん中を抜くことで、跳ねるようなビートになっているのがわかるかと思います。
ジャズでとてもよく使われるスウィング
シャッフルと似たようなビートで、スウィングと呼ばれるものがあります。
スウィングはシャッフルほど厳密なルールはありません。ビートの偶数の拍を後ろにずらす事でスウィングビートにしますが、ずらす幅は演者の自由です。
楽器プレイヤーの音ノリの多彩さが物を言う奏法ですが、溜め気味に後ろにずらすとグルーヴィーで味のあるビートになりやすいです。
・定番ビート
・スウィングビート
聴いた感覚としてはシャッフルとスウィングは似ています。
シャッフルとスウィングを同義として解説している方も多くいらっしゃいますが、せっかくなので、それぞれをもう一度聴き比べてみましょう。
・シャッフルビート
・スウィングビート
シャッフルは明確に『3連符から真ん中を抜く』と定義づけされているので、リズムにズレはありません。基本的に規則正しいリズムなので、わりと縦ノリのリズムです。ダンスミュージックでも使われるほどですしね。
一方のスウィングは、音をプレイヤーの裁量で意図的にずらす奏法です。そこには人間独特の溜め方が表れますので、ジャズマンの方とかだとかなり溜め気味にドラムを叩いたりします。この溜めが長いと、文字通り体を揺らす(スウィングさせる)ような、横ノリのリズムになっていくのです。
かつては、異国の言葉がわからない演奏家たちの唯一の共通言語が音楽だったわけです。ジャズマンたちは人間らしい方法で、音楽の三大要素のひとつであるリズムを発展させてきました。その過程で生まれたのがこのスウィングだったりします。
シャッフルは、このスウィングを誰でも簡単に作れるように明確に定義づけした物ではないかと僕は考えています。(もちろん、いろーんな学説がありますので、僕のこの考えが確実に正しいわけではありません。悪しからず…)
R&BやHip Hopで使われる独特のキック遊び
ロックやEDMなどの、キックのリズム感が楽曲の軽快な進行を支えているジャンルとは異なり、R&Bというジャンルはキックで遊んでいることが多いです。
スネアは正確なリズムを刻み、重低音であるキックでグルーヴを表現することで、R&B特有のセクシーさや大人のムードを演出しているわけです。
ロックとR&Bでは、一般的にR&Bの方がテンポが遅いことが多いです。それもムーディーな演出に一役買っているわけですが、ひとまず違いを聴いてみましょう。
・ロックテイストなドラムビート
・R&Bテイストなドラムビート
音楽とは緊張と緩和の連続であるとよく言われます。コード進行の解説で使われることが多いですが、リズムにおいてもそれは同じです。
人間は基本的に、規則正しいものを聴くと安心して、規則正しくないものを聴くと不安になります。
R&Bのリズム感はそれを上手に使っているなと思っていて、キックやハットなどの音が遊ぶことで緊張感を味わうのですが、スネアの音は正確なリズムを刻んでいるので、スネアを聴くたびに安心感を得られるのです。
それは男女の恋愛や、性愛の駆け引きによく似ています。
自分が想いを寄せている異性の反応や所作に一喜一憂した経験は誰にでもあるでしょう?
だからこそ僕たちは、R&Bというジャンルに対してセクシーさやアダルトな印象を抱くことが多いのかもしれませんね。
拍子を変えてグルーヴ感あふれるビートを作る
楽曲制作において、基本のリズム感は4/4拍子ですが、中にはワルツで使われる3/4、6/8、12/8拍子や、最近隆盛しているLo-Fi Hip Hopにおいてよく使われる5/4、7/8拍子のような変則的なリズムも存在しています。
ドラムビートにグルーヴ感を演出したいときには、こういった拍子設定の力を借りることも効果的です。
前回の記事でLogic Pro Xに含まれている音源のみで楽曲を作っていくことを公言いたしましたが、ジャンルとしてはお洒落でチルアウトできるようなHip Hopにしたいと思っていましたので、せっかくですからこの変則的な拍子設定を使っていきましょう。
7/8拍子で、Lo-Fi Hip Hopでは定番のリズムビートを作ってみました。
まずは聴いてみてください。
・7/8ビート
4/4拍子でも5連符や7連符を使えば同じことができますが、拍子を変えてしまった方がわかりやすいです。
設定上ではBPMを280に設定し、半々ノリ(1/4ノリ)しています。
つまり、実質のBPMは70です。
作り方もそんなに難しくないです。
まずは拍子変更から行いましょう。
変更手順はこちらの記事にまとめておりますので、ご参照ください。
拍子変更が行えたら、早速打ち込み開始です。
ドラムトラックも、通常のインストゥルメントと同じようにMIDI打ち込みをしていきます。MIDIリージョンを立ち上げて、ピアノロール上で打ち込んでいく手法です。
MIDI打ち込みについてはこちらの解説をご参照ください!
MIDIリージョンを立ち上げたら、奇数小節の拍頭にキックを、偶数小節の拍頭にスネアを鳴らします。ドラムトラックは各鍵盤に音が割り振られていますので、鍵盤をクリックしながら探してみてください。
その後、5/4拍子なら各小節の4拍目に、7/8拍子なら各小節の5拍目にクローズハイハットを鳴らしてベースのリズムは完成です。あとはお好みで装飾音を乗せるだけ。
1小節が偶数で等分されていないので、どうしても変則的なリズムを操る必要が出てくるわけですが、上手く使えば聴く人にグルーヴを感じさせることができます。
テクニックの一つとして覚えておきましょう!
ドラムを打ち込む際の注意点
さて、どのようなビートにするかを決めたらいよいよ実際に打ち込んでいくわけですが、ドラムを打ち込む際には注意点があります。
それは、ドラムパートすべてを1トラックとして打ち込むのではなく、各パートごとにトラックを用意すること。
キックならキックのみ、スネアならスネアのみで1トラックずつ用意する必要があるということです。これは絶対に守ってください。
なぜこうする必要があるかというと、後々ミキシングするときに影響が出るからです。
例えば、ドラムのキックのみにEQやディストーションをかけたいと思ったシチュエーションを想像してください。ドラムの全パートが1トラックにまとめられてしまうと、EQやディストーションの影響はキックだけでなく、ドラム全体に及んでしまいます。それを防ぐために各パートを細分化しておく必要があるわけです。
また、ややこしいことに、細分化しなくて良いパートも存在しています。それはオープンハイハットとクローズハイハットです。
ほとんどの場合、ドラム音源はオープンハイハットの後にクローズハイハットが打ち込まれると、クローズハイハットが鳴った瞬間にオープンハイハットの音が止まるように設計されています。実際のドラムではそうですからね。
これをそれぞれ別トラックにしてしまうと、オープンハイハットの音がだらしなく鳴りっぱなしになってしまうのです。
細分化するべきパートと、細分化するべきでないパートを見極めながら、適切にドラムトラックを作っていきましょう。
おさえておきたいドラム打ち込み時のTips
ドラム打ち込みにもテクニックがありますので、簡単にご紹介しておきます。
①トラック名にパート名を入力しておく
言われるまでもないことかもしれませんね。
どのトラックがどんな音色の音なのかをわかりやすくするために、トラック名にパート名を入力しておきましょう。
ミキシングエンジニアにデータを渡す段階ではドラムキット名は消しておき、単純にパート名だけを入力しておくのが良いです。しかし、作曲段階ではどのドラムキットから音をチョイスしたかを明記しておくと便利なので、キット名を消すのは作曲が完了してからでOKです。
②数あるドラムキットから必要な音をチョイス
せっかくパートごとにトラックを分けるのですから、全パートの音を1つのドラムキットで統一する必要はありません。
自分がイメージする楽曲に合う音が他のドラムキットに含まれているのなら、遠慮なくそちらを使いましょう。ドラムトラックをパート分けすることの利点の一つです。
③複数の音色を重ねて1つのパートを作る
これはドラムに限らず言えることですが、理想の音色を作るのに、複数の音を重ねるのは効果的です。
例えばキックで言えば、低域の強い音像のぼやけたキックと、高域の強い金属音のような硬い音色のキックを重ねることで、低域と高域をバランスよく含んだキックの音色を作り上げることができます。
もちろん、1つの音色で十分な場合も多くありますが、欲しい音色がないときには、その音を狙って作りあげる技術も必要です。
必要に応じて複数の音色を重ねてみてください。あなたが望む音を手に入れることができるかもしれません。
【終わりに】ドラムは後でミックスすることを考慮して打ち込もう
ドラムトラックのパート分けや、音を重ねることによる音色の作り込みは、いずれも後続の工程であるミキシングを有利に進めるために必要なことです。
音楽は作曲するだけで終わりではありません。人に聴かせる状態にするためにはミキシングを行う必要があります。
後でミキシングすることを考えて音色を作り込んでいけるかどうかが、最終的な楽曲のクオリティを左右します。早いうちから意識しておきましょう!
さて、Logic Pro Xだけで楽曲制作を完結させることを目指しているわけですが、今回はドラムビートを打ち込んでいきました。
ひとまず完成したベースのビートがこちらです。
・Love Logic Pro Foreverドラムビート
もちろん、楽曲の展開ごとにビートを少しずつ変えていくので、これだけをループするわけではないのですが、根幹となるビートはこの方向性でいこうと思います!
最終的にどんな楽曲になるのか、皆さんも楽しみにしていただけると幸いです!
それでは、今回はこの辺で!
また次回の更新でお会いしましょう!